時代に乗り遅れ
良いか悪いかの評価は、未だに判りませんが、鉄道製造の世界的な業界再編は未だに続いていて、その渦中に巻き込まれた代表的な形式の一例が本機になります。
オーストリア鉄道の1012形は、同国本線電機のオリジナル設計としては現状最後の形式になってしまったという位置付けです。
車両としては、ジーメンスのドレミファインバータ車の仲間ということになります。 登場した1997年は、オリジナル設計即ち鉄道車両特有の受注産業という昔の流れを、製造側の都合で見直す流れが日本も含めて盛んになり始めたころになります。
つまり業界再編による様々な施策の見直しは、車両の発注業務にも影響を及ぼすことになりました。事業者ごとの特有仕様で車両を製造するという行為は、製造者側にとって古来の風習を引き継ぐ前時代的な仕事の仕方という定義をして、コスト削減の観点から車両調達にあたり改善すべき商流であると主張し、購入側となる事業者は自らの仕様に合う車両を調達したいことから、その損得のつばぜり合いの状況でありました。
結局、調達コストが高いという双方の言い訳が成り立つという、尤もらしい理由をこじつけられて、本形式は量産先行3両で製造が打ち切りになってしまうという、実に不運な車両になってしまったわけです。
折角、ÖBBの電機らしい特徴を受け継ぎながら、90年代欧州の流行スタイルも取り入れ、スッキリまとまった車体に仕上がっていますが、この個体をもってオーストリア鉄道の特徴を大きく持つ車体は打ち止めになってしまいました。
・・・と言っても、次に続くタウラスは、必要最小限の部分にオーストリア固有の思想が残されているところもあり、逆に標準仕様にレベルアップしたというところもありますので、その辺りは損得のバーターになるんでしょう。
3両という小世帯になってしまったため、登場後10年でさっさと他事業者に売却されてしまいましたが、まだ車齢20年程度ですので元気に活躍しています。
・・・次回へ続く。