穂の原でんしゃ製作所

鉄道模型を楽しくカンタンに工作したい方にオススメ。

鉄道模型コンテスト2023へ行く その3

心象風景の好例

 人の記憶というものは都合の良いところを切って貼ったり、また都合の悪いことを切って貼ったりして、勝手に頭の中に思い描くストーリーを作り上げるという才能があります。

 鉄道模型のシーナリーというものは、その適例でありまして、かつての名書籍であった機芸出版の「レイアウトモデルリンク」?にも、その説明が詳しく解説されていました。そこで使われていた名表現「心象風景」。

 これが鉄道模型レイアウトのシーナリーを作り上げる上では、大切なキーワードになっているのは昔も今も変わらない、というのを再認識する作品がありました。

 この写真の画面を見るだけでも、隧道の坑口は「九州新幹線」の印象、上の築堤を走る赤い車体のディーゼルは、豊肥線のキハ185というインプットがあり、「あぁ!、、九州だなぁ」と思い起こすことが出来ます。

 そして、ディーゼルの居る線路を観ると、分岐で別れていく線路があって、このカタチは「あぁ、立野だなぁ~」と過去の記憶を呼び戻すことになります。

 この立野のスイッチバックで、今年遂に引退するハチロクの勇姿を撮影した30年前が、ついこの間の出来事のように、カムバックしてくるのです。でも、ハチロクが居るのは河原近くの線路で、新幹線の橋梁の下。豊肥線にはこのような場所がありませんが、九州の各地にはこのように在来線が交差する場所が何か所もあります。

 直射日光が当たり、実景に近い雰囲気になっています。実に良い雰囲気です。

 特徴ある隧道内もしっかり作りこまれていて、架空の名称「立野」の銘板が掲示されています。

 このような感じで全体を表現されているわけで、実際あるかのように心の中を置き換えてしまう風景、これが心象風景で、レイアウトの構成が優れていることを示すのでしょう。

 草木も丁寧に表現されています。この結果、構成の良さと相まって、とても気持ちが良い晩秋の豊肥線を彷彿させる九州の実在しない風景を、あたかも実在しているかのように描写することを成功させています。

 このモジュールレイアウトを観ながら、学生のトンネルの作り方の苦労話を聞くことも出来て、これからの世代の成長が楽しみだと、感じた次第であります。

 

・・・そのうち続く。