木造車の痕跡を探す
近寄り難い日車支店標準電車ですが、どのこ事業者向けも大概は古い車の更新名義で製造されたものが多くありました。
さて、この秩父の車両も御多分に漏れずですが、車両更新の名義は書類上だけのものだったり、本当に工場内に転がっていた部材を使用したりと、今となっては実態が定かではない場合がほとんどです。
一番近くで観察できるクハニ29.台車は随分新しそうな外観で、まるで名鉄7300のようです。
側バリの形状がFS台車のような特徴です。ボルスタアンカーが近代的。台枠の側バリが見えます。
先頭部では、端バリ部分が1段下がったような構造になっています。
すごく古臭い雰囲気が出ています。雰囲気的に東急の3300を思い出しました。
この車両の車歴は、国鉄のサハ25が出自とのこと。即ち省電のデハ33400一族ということになりますので、大正ヒトケタの日車支店または汽車会社の車両。東急の3300よりは新しい車両になります。
ということで、台枠だけ見ると100歳になろうかという車体。残っている方が奇跡かもしれません。側鋼体の出入り口下部には3か所出っ張りがあり、デッキ付きだった痕跡を残しています。
前面は非貫通構造で、中央運転台。標準車体でこの形状は珍しく、秩父オリジナルという形態となっています。塗装の塗り分け形状は、後のDBのヨダレカケを彷彿とさせる感じでして、こちらが元祖ヨダレカケと言い切っても良いでしょう。
前灯のレンズが緑がかっており、一世を風靡したウランガラスのようです。今となっては貴重品です。
ということで、色々な世代の部品を組み合わせて成り立った車両ということが判ります。
・・・次回へ続く。